Corel Painter Artist いしかわこうじさん特別インタビュー
長年にわたりPainterを愛用し続けている、アーティストのいしかわこうじさん。頭の中の世界観を表現するのにPainterは欠かせないツールになっている、と語ります。いしかわさんの作品はどれも温かく、やさしい。
今回の個展は2008年5月に出版された絵本「ふねくんのたび」の世界観を拡大した、いわば絵本原画展。原画といってもデジタルで描かれたアナログの世界。Painterで描かれた、彼のこだわりが細部に入った作品群がずらりと並びます。
いしかわこうじ「ふねくんのたび」展
期間:2008年7/22(火)~7/28(月)
12:00~19:00(会期中無休)
会場: K.S.ギャラリー原宿
〒151-0051 渋谷区千駄ヶ谷3-62-1
※詳しくはこちら
「ふねくんのたび」
いしかわこうじ作・絵
ポプラ社
Q: いしかわさんはアナログペインティングもされていますが、Painterと比較すると作品の雰囲気に違いは出てきますか?
A: 個展もあり、ここ5年は油絵を描いています。現在はアナログとデジタルの画材を意識的に行き来していますね。Painterを使うと油絵と工程は違うけれど、ほとんど変わらない仕上がりになります。油絵だと2次元のキャンパスに絵の具を塗り重ねて、絵の具の層の厚みや透明感を出していくのですが、Painterでも同じ作業をしています。ブラシのタッチも3Dで出すことができるので、やりすぎない程度に隠し味で入れていくと面白い絵に仕上がります。
Q: アナログペインティングとPainterを使った作品と、使い分けはどんな形でしているのですか?
A: 個展などでは油絵を出展したりしているのですが、ここ数年は絵本を出版しているので、出版物に関してはPainterを使っていますね。油絵は質感がすばらしいのですが、どうしても一発勝負の要素があるし、複写する際に光ってしまうので、油絵的要素を持ちながら印刷、となるとPainterを使用しますね。
嵐の場面の絵。シンプルな形の中に油彩風のタッチを加えることで、画面に深みを出している。
Q: Painterの気に入っている点はどこですか?
A: 工夫して使っていくとデジタル感が全くなくなり、温か味が出るところです。Painterのように、デジタルということをほとんど意識することなく、絵画表現に没頭できるツールは他にないと思います。
扉の絵。
青い海の美しさが、絵本全体をまとめるトーンになっている。
Q: 実際にいしかわさんがPainterで絵を描くときの工程を教えてください。
A: 昔は幾重にもレイヤーを重ねていましたが、油絵のように描きたいので最近は数レイヤー程度を使い、ほとんどベタ面の絵として描いています。背景は黄色!と決めたら黄色で背景を描き、そこに登場人物を単純な色と形でレイアウトしていく形です。おおまかな画面構成を色ですばやく決めた後、細部の描き込みをしながらタッチを加えて完成させます。筆はカスタマイズしたものを20本くらい使っています。今のバージョンでも昔のバージョンで作った筆が使い続けられるのもPainterのいいところですね。

絵本の最後の観音開きの絵は、横幅15000ピクセルを超える大作だ。
Q: Painterを使う方は同時にPhotoshopも使っている方が多いのですが、いしかわさんはどのように使い分けていますか?
A: 絵を描く時って集中して、がーっと描くんです。Painterで夢中になって描いたものをPhotoshopで開いて客観的に見る、という作業に使ったりしています。そこで、「この登場人物をもう少し大きくしたいな」とか「色を部分的に変えたいな」というときにPhotoshopで編集作業をします。主にリサイズやオブジェクトの移動やフィルタをかけたり、と大胆な画面構成を変える時にPhotoshopで編集しますね。逆に濃淡のあるタッチの表現は、Photoshopでもある程度出来るのですが、どうも直観的でないんです。なので、絵を描く作業はPainter、描いた絵を編集するときにPhotoshopといった使い方をしています。また、僕は自分の本は自分で装丁しますが、それにはIllustratorを使っています。
Q: いしかわさんにとってPainterを一言で言うと何ですか?
A: 画材ですね。PhotoshopやIllustratorを使うと、機能は優れていると思うのですが、作品がどこかソフトウェアに引っ張られるんです。ツールの設定したルールに、人間が従って絵を描く部分がある。Painterはその点「画材」としてすごくニュートラルで、幅が広いので、アーティストの個性や作風がそのまま出せるんです。頭の中に描いていたものを、スポンとそのまま出せる。表現にずれがないところがとても気に入っています。
プロフィール
絵本作家・イラストレーター
いしかわこうじ
1963年千葉県生まれ。絵本作家、イラストレーター。
武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。講談社童画グランプリで大賞受賞。イタリア・ボローニャ国際絵本原画展で入選。動物や人物のキャラクターを生かしたイラストレーションで、広告や出版、キャラクターデザインなど幅広い媒体で作品多数。近年は、絵本や工作絵本も数多く手がける。紙で作った小さな犬『ペーパーわんこ』と世界中を旅して撮影するプロジェクトを展開中。主な作品に、「どうぶついろいろかくれんぼ」「のりものいろいろかくれんぼ」「ふねくんのたび」(以上ポプラ社)、「このしっぽだあれ?」「このおとなにかな?」(以上講談社)、「世界を旅するペーパーわんこ」(河出書房新社)等があり、フランス・台湾・韓国など海外でも翻訳版が数多く出版されている。
東京イラストレーターズ・ソサエティ(TIS)会員。日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)会員。
累計50万部の人気シリーズ「これなあに?
かたぬきえほん」の
最新作 「くだものいろいろかくれんぼ」と「どうぶつもようでかくれんぼ」
共に、いしかわこうじ作・絵 ポプラ社